轆轤成形により、高台を高めに作り、腰から口縁にかけて曲線を描いて立ち上がり、木盃形とする。見込には、墨弾きの技法と呉須の濃淡により流水文をあらわし、その波間に散り落ちるような紅葉文を、赤色の線描きと、内側を赤・薄赤・黄・緑色の上絵具で塗込めて描く。側面には、呉須で七宝文を三方に描き、高台は櫛高台とする。本作品は5枚揃いで、いずれも均一に文様が施されているため、仲立ち紙を用いて下書きを転写したと考えられる。
巧みな文様表現が示す技術力の高さは隆盛期の鍋島焼のものであり、色鍋島あることからも、染付磁器が生産の主流となった徳川吉宗の治世以前と作品と考えられる。5枚揃いで伝世した点も貴重である。