149 中村宏(1932− ) 基地 1957年
静岡県浜松市生まれ。日本大学芸術学部に学ぶ。在学中に学生運動に身を投じ、1953年に日本青年美術家連盟の結成に参加。同年第1回ニッポン展に出品。55年前衛美術会会員。56年タケミヤ画廊で個展。64年立石絃一と観光芸術研究所を創設。97年に池田龍雄と二人展(練馬区立美術館)。
中村は1950年代半ば、米軍基地拡張反対闘争などに参加しながら、政治的主題の作品を数多く描いたが、それらの作品では誇張された遠近法によるパノラマ的な構図、極端なクローズアップやモンタージュ的なイメージの挿入によって、戦後社会の現実が異様な迫力で捉えられている。《基地》は、ジラード事件(57年1月に、群馬県相馬ケ原米軍演習場で弾拾いをしていた日本人女性が射殺された事件)を扱ったものとされる。巨大に描かれた加害者と、その傍らに小さく描かれた被害者との極端な対比が、事件の不条理さを告発する。