金剛三昧院多宝塔 一基
金剛三昧院は建暦元年(一二一一)源頼朝の菩提を弔うため鎌倉二品禅尼(北条政子)が創立した禅定院に始まるといい、承久元年(一二一九)に金剛三昧院と改めた。多宝塔はその後貞応二年(一二二三)に建立されたといい、様式もこの頃に一致している。
塔は三間多宝塔で、石山寺多宝塔(国宝)とよく似た手法を示している。ただし裳階は割合に立面が低く、組物及び垂木に大面を取り、また柱の頂上に台輪長押がないことや縁に高欄を用いていないことなど、若干の相違がある。内部は心柱を天井上でとめ、四天柱を立て折上小組格天井を張っている。柱、壁、長押などにはすべて彩色を施し、仏画を描いている。この塔は鎌倉時代前期に建立された多宝塔として、石山寺多宝塔とともに最古の遺構に属する貴重な建築である。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)