工芸品 / 唐
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唐
- 鋳銅製。やや黄味の強い銅で、鋳浚(いさらえ)を施し鍍金している。輪は添樋を通した三条筋で瓢形をなし、上端は外方に反り先端と左右肩に玉形を飾る。下端は内部に巻き込みその先端は分かれて上に仏像を安置する。輪頂は二段座上に立鼓形蓮華座を重ね、上に四方火炎付宝珠を据える。宝珠は鋳抜き遊ぶ。柄は七段に三条筋を巡らし、その上に蓮華座上に瓶形を重ね、その上にさらに段を重ね、蓮華座に阿弥陀如来を安置する。蔵は表裏とも透入舟形光背を負う阿弥陀三尊で、鋳損は、一面通肩来迎蔭の立像、他面は通肩結跏趺座の定印を結び、左右に舟形光背を負った菩薩を配す。さらにその外側には四天王像を鋳表す。像は背面を通して巧みに鋳つないでいる。遊鐶六箇。柄は後補。
- 総高27.0 輪径13.8 (㎝)
- 1柄
- 重文指定年月日:19010327
国宝指定年月日:19810609
登録年月日:
- 善通寺
- 国宝・重要文化財(美術品)
錫杖は僧侶・修験者が持つ杖で、昔インドで山野を遊行するとき、これを振り鳴らして毒虫などを追い払い、また行乞【ぎようこつ】の際、門前で鳴らしたものという。これは金銅製で輪の中に二組の阿弥陀三尊と四天王を背中合せに鋳出し、製作は精緻で優れている。中国の唐の作で、古く日本に伝来し、錫杖のみならずわが国の金工技術にも影響を及ぼしたものとして意義深い。極めて類品の少ないもので、錫杖の代表作である。弘法大師将来の寺伝がある。