本朝麗藻巻上 ほんちょうれいそうまきじょう

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 鎌倉

  • 鎌倉
  • 1帖
  • 重文指定年月日:19940628
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 公益財団法人前田育徳会
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 『本朝麗藻』は平安時代中期の漢詩文集で上下二巻、編者は高階積善【たかしなのもりよし】。成立は寛弘七年(一〇一〇)頃と考えられている。上巻は首尾を欠くが春夏秋冬の四季部からなっていたとみられ、現存詩数五十首を数える。下巻は山水・仏事・神祇など一六部門に分かれ、百首を収めている。作者は一条天皇、藤原道長以下藤原公任、大江以言【もちとき】、源為憲等二九人を数え、一条朝の詩人を網羅している。
 本帖は巻上の唯一の古写本で、体裁は粘葉装、後補茶表紙を装する。料紙は楮紙に半葉六行に押界を施し、詩序は一行一七字前後、詩は二句一行に速筆をもって書写される。本文は首尾を欠き、源孝道の詩序より大江以言の詩序の途中までで、詩文は四八首を存しており、文中には別筆で墨仮名、校異、墨声点などが付されている。奥書等はないが書風などよりみて鎌倉時代前期の書写と認められる。包紙には「無外題 書出白河院」と前田綱紀の墨書があり、別筆にて「称名寺蔵書之内」の朱書がある。本帖からの転写本とみられる彰考館本(戦災焼失)に「貞享乙丑捜金沢文庫偶得残篇以補」(『彰考館蔵書目録』)とあることから、本帖がもと金沢文庫に伝来し、綱紀の蒐集により前田家に入った経緯が判明する。
 なお、彰考館本を底本としたとみられる『群書類従』本の上巻部分には、この前田家本の現存分の前に二首の詩文が収められており、彰考館本の書写された貞享二年(一六八五)段階では、首に一葉分存したことが知られる。
 『本朝麗藻』下巻は江戸時代の写本が多数伝わっているのに対し、上巻は本帖と、その転写本たる彰考館本が知られるのみである。本帖は残欠本ではあるが、平安朝漢文学の完成期にあたる『本朝麗藻』の中世初期に遡る古写本として価値が高い。

本朝麗藻巻上

ページトップへ