西明寺本堂 一棟
西明寺は承和元年(八三四)の創立と伝えられるが、現在の本堂は様式上鎌倉時代に属し、しかも二種の様式が混合している。すなわち、最も古いと考えられる柱、組物、蟇股などは、鎌倉時代前期と思われ、またこれと同時とみられる妻飾が、現在でも小屋組内に残っている。これらから考えれば、もとは方五間の堂であったものが、鎌倉時後期頃に、正側面とも各一間通りが拡張され、それにともなって柱、組物、蟇股などが補加されたり、移動されたりし、また何時かわからないが背面一間通りも拡張され、桁行、梁間とも七間の堂となり、さらに室町時代中期頃には向拝三間が付加されて、現在のような形態となったものである。
現在正面は七間とも蔀戸を吊り、側面は前三間を板扉、それ以後は壁の部分が多い。組物は出三斗で、中備に蟇股を入れるが、これらには前述のように新旧二種の別がある。内部は内外陣に区画し、ともに板敷で、外陣は折上小組格天井、内陣は化粧屋根裏を現している。全体に純和様からなり、その意匠はきわめて優秀で、近畿地方における鎌倉時代和様仏堂の代表作のひとつである。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)