横須賀の虎踊 よこすかのとらおどり

民俗 無形民俗文化財

  • 選定年月日:20040206
    保護団体名:浦賀虎踊り保存会、中村町内会虎踊り保存会
  • 記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財

 神奈川県横須賀市西浦賀町【にしうらがちょう】と野比【のび】にそれぞれ虎踊が伝承されている。それぞれ神社の祭礼のときに境内に舞台を仮設し、二人一組で扮する虎を和藤内【わとうない】が鎮めて曳いていくという芝居仕立ての芸能である。
 浦賀は、江戸時代に浦賀奉行が置かれた海上交通の要衝であり、東京湾に面する浦賀湾の西側に西浦賀町がある。
 西浦賀町四丁目には為朝【ためとも】神社があり、虎踊は同地区の人びとを中心に、その境内に舞台を仮設して行われている。舞台は、間口約八メートル、奥行き約五メートル、高さ約一メートルで、社殿の左側に社殿正面に対して直角に舞台正面を向けて設置する。背景には山の絵を描いた幕を張り、下手に客席へ降りる階段を設け、上手に楽屋からの出入り口を付けている。楽器は笛、締太鼓、大太鼓、鉦、三味線で、舞台上手後方のくぼんで奥まった所に並んで演奏する。
 虎踊は、小学生の男子が扮する和藤内、中国風の服に髭を付けた大唐人【おおとうじん】、小学生から中学生くらいまでの女子が扮する一〇人前後の唐子【からこ】、親子とされる大小二頭の布製ぬいぐるみの虎が登場する。まず和藤内が唐子の踊りを大唐人に所望し、大唐人の指図で唐子たちが登場し一列に並んで踊りを披露する。二頭の虎が現れると、大唐人、唐子たちは下手の階段から逃げ、舞台では虎が暴れる様子を踊る。虎は左右にのし歩いたり、後ろ足で立ち上がって回ったりといった所作を見せる。小さい虎が退場した後、最後に和藤内が大きな虎の頭を神社のお札【ふだ】で押さえて鎮め、虎は後ずさりして退場する。
 西浦賀町の虎踊は、弘化二年(一八四五)に書かれた記録に現在の静岡県下田市で虎を修復したとする記述があり、それ以前から西浦賀町に伝承されていたことがうかがえる。
 野比は、西浦賀町の為朝神社からは西南およそ四キロメートルの位置にあり、東京湾に面した三浦海岸にあり、その三浦海岸を望む丘陵に虎踊の行われる白髭【しらひげ】神社がある。
 虎踊は、白髭神社社務所の広場に虎台と呼ばれる仮設舞台を組んで行われる。舞台は、間口約六メートル、奥行き約一〇メートル、高さ約一・二メートルで、正面に階段が付けられ、背景には山の絵が描かれ、中央に虎が出入りする穴が付けられている。楽器は、笛、締太鼓、大太鼓、鉦が用いられ、演奏は舞台後方に並んで行われる。
 登場人物は、大人が扮する和唐(藤)内、大人の唐人髭を付けた大将【たいしょう】、一〇人前後の子どもの唐子、布製ぬいぐるみの虎一頭である。和唐内の求めにより大将が唐子たちを呼び出し、唐子は正面階段から舞台に上がって輪になったり列になったりして踊る。踊り終わるころ、舞台後方から虎が現れ、唐子たちは逃げるように舞台を降りる。虎は、後足で体を掻いたり、逆立ちしたりといった所作を行い、最後に和唐内が虎の首を抱きかかえ、捕らえた虎を連れ帰るように舞台後方へ引っ込む。これが一回分で、五回ほど度行われる。唐子は五、六曲、虎は八、九の演技を適宜組み合わせて上演する。

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