元興寺極楽坊五重小塔 一基
もと元興寺極楽坊本堂(国宝)内に安置されていたもので、現在は同寺内収蔵庫に保存されている。制作年代は明らかではないが、様式手法より奈良時代後期と考えられる。その後、鎌倉時代、天和三年(一六八三)、明治三十一年に修補があった。
小塔は元興寺五重塔の十分の一の模型といわれる。平面は各重とも中の間と両脇の間とを同じ大きさにとっている。このような平面は塔跡としては各地に見出されるが、現在の遺構には存在しない。組物は各重ほとんど同じ大きさの三手先で、隅に鬼斗を用いない。初・二・三重には中備として間斗束を置く。屋根は本瓦形の板葺きで、軒先は茅負とともに作り出しとなっている。相輪は請花及び水煙以外は木製である。この小塔は奈良時代の様式を示すものとして貴重であるばかりではなく、海竜王寺五重小塔が構造を略しているのに対し、これは内部まで建築的に造られているなど、古代の建築技法を知るうえに絶好の資料である。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)