海竜王寺五重小塔 一基
この塔はもと海竜王寺西金堂内に安置されていたもので、三手先ではあるが完成された形式でない組物の制度、軒廻り、天井などは薬師寺東塔(三重塔、国宝)とよく似ており、奈良時代前期の様式をよく保存している。明治四十年修理を施し、失われていた相輪と下の台座とを補った。なお塔内には、箱入りの紙本朱書法華経二巻が安置されていた。また塔の尾垂木、地垂木、飛檐垂木の各木口には飾金具が打ちつけてあって、飛檐垂木金物二箇を残している。この塔は小塔ではあるが外観は正規の建築的手法になるので、奈良時代前期の様式がよく表されている。しかも保存がよいので、当時の建築的手法を知る上にも貴重な資料ということができる。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)