金峯山寺本堂 一棟
金峯山寺は役小角の開いたところと伝える。寺は山上・山下の二伽藍に分かれており、この本堂は山下のもので、蔵王堂と呼ばれている。本堂は古来たびたびの火災をうけており、現在のものは天正十四年(一五八六)焼失後に再興されたもので、記録によると、天正十五年立柱、十六年頃供養とあるが、扉の八双金具に天正十九年の刻銘があり、この頃には本体工事をほぼ完了していたとみられる、
桁行五間、梁間六間の身舎に、裳階を付け、正面二六メートル、側面二七メートル、総高二七・五メートルに及び、全国でも有数の大建築である。身舎は和様四手先組物で、中備に花肘木や双斗を入れ、裳階は三斗組で、組物間を蟇股や簑束で飾っている。内部には仕上げていない長大な柱が林立し、壮観である。このような大建築を造営することは技術的に困難であるのにかかわらず、よく整った形態を示している。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)