近くの浄国寺から移された客仏として祀られる来迎阿弥陀の小ぶりの三尺像で、左足〓外側の後世薄く削り落とした面には、造像時の作者銘にならい書き直したものと思われる「巧匠/安阿弥陀佛」の墨書銘があり、左足〓正面に「□阿弥〓佛」、右足〓正面に京都・遣迎院の快慶作阿弥陀如来像の結縁交名にもみえる「生阿弥〓佛」の名を記す当初の墨書銘が認められる。頭躰の主要部は檜の一材から木取りして前後に割矧ぎ、内刳りのうえ頭部を割離し、表面は金泥塗とし着衣の縁に沿って二条の截金線をおくが、全体に油煙で黒くなっている。玉眼嵌入にともなう特色ある内刳りの手法が新光明寺および八葉蓮華寺像と共通し、像内に巻子状の納入品数点を奉籠することが、X線透視撮影によって確認される。
上下の瞼や頬の上部が柔らかに膨らみ眼窩と口もとに深い窪みをつくる面貌、肉付きのよい広い胸、しなやかな襞を重ね襟を薄くしのぎ立てる表現には、熟達した彫技とともに南都の鎌倉復興時に活躍した奈良仏師のスタイルがうかがえ、いまだ快慶らしい、理智的な表情やまとまりのよい姿態が見えない。後の書き起こしとはいえ銘文からも快慶の初期の作例に加えるべきものと考えられ、いかにも若々しい謹直な作風は推賞されよう。光背、台座は後補である。