紙本金地著色南蛮人渡来図〈/六曲屏風〉

絵画 / 安土・桃山

  • 大阪府
  • 安土桃山
  • 一双
  • 大阪城天守閣 大阪府大阪市中央区大阪城1-1
  • 重文指定年月日:20020626
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 大阪市
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 南蛮人渡来図は描かれる景観によって三種類に分類されている。第一類型は北村本(平成七年六月十五日指定、重文)に代表され、左隻に日本の港に入津する南蛮船と荷揚げの様子を、右隻に南蛮人の行列とキリスト教館を描く。第二類型は神戸市立博物館本(平成七年六月十五日指定、重文)に代表され、左隻に異国の港の南蛮船を描き、右隻には第一類型の両隻の図様を一図にまとめて描く。第三類型は右隻が第二類型と同様で、左隻には南蛮船の表されない異国の景観を描き、サントリー美術館本(平成八年六月二十七日指定、重文)が代表例である。
 本図は神戸市立博物館本、西蓮寺本、個人蔵本等と同じ第二類型に属するが、これらとは別個の図様構成をもっており、本図のほうが特異といえる。
 殊に左隻に描かれた異国の港に、南蛮人とともに中国的な風俗の東洋人が多数描かれている点が珍しい。第三類型に分類されるサントリー美術館本左隻に描かれた異国人の会議の情景にも二人の東洋人の男性が登場するが、本図の場合は二〇名にも及び、そのうち子どもが一四名を占めている。さらに前景に大きく描かれた船着場の白い小舟が、中国の風俗としてしばしば描かれるモチーフであることなどから、左隻は想像上の中国の港を描いたと考えられている。南蛮船が日本到着前にマカオに寄港するという知識に基づいた構想と考えられる点でも、興味深い作例である。
 その他にも戸口に洋風の基台、柱頭、アーチをもった建築、南蛮人の服飾、ストールに見る陰影表現など、南蛮風俗に関する豊富な知識を示すが、南蛮人を迎える人びとが南蛮人同様に、首にかける、手に持つ、腰紐にかけるなどして、ロザリオを身につけているうえ、異国風俗の見物というよりは、親近感をもって南蛮人を迎えようとする様子がうかがわれる点でも特徴的である。
 細部描写は神戸市立博物館本に劣らず精緻である。衣服の文様を細かく描きこみ、南蛮人の衣服がもつ毛織物の厚み等を効果的に描出し、フランシスコ会修道士の織り目の粗い僧服の質感等も丁寧に描出している。
 画風は人物表現、岩組の描法、樹法、複雑な金雲構成等に明らかな狩野派様式が見られる。しかも、精緻な細部描写と整った画面構成とをもつ点で、狩野光信周辺の狩野派中枢の画家の筆と考えられる。制作年代も慶長期をくだらないと考えられている。
 保存状態としては、亀裂がところどころに見られるが、絵の具の状態は良好で金碧画本来の美しい色彩表現を保っている。南蛮人渡来図のなかでも慶長期に遡りうる作例は数点に過ぎない。本図はなかでも特徴的な図様をもつ優品として貴重である。

紙本金地著色南蛮人渡来図〈/六曲屏風〉

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