本巻は有栖川宮伝来になる新楽府上残巻で、小野道風自筆本の筆法を忠実に写した臨模本と認められ、筆者の明証はないが伏見天皇(一二六五~一三一七)と伝えている。斐紙(無界)八紙継に白楽天詩集巻第三(新楽府上巻、二十首)のうち(第十七)五弦弾、(第十八)蠻子朝、(第十九)驃国楽の三首を存しているが、第一紙首及び第八紙末に紙継跡が認められるから、本巻の首尾にさらに前後の部分があったことを推察させる。
現存する道風筆新楽府の臨模本としては近衛家熙筆本が著名であるが、入木道の名家と称された伏見天皇の書法習学の跡を伝え、書道史上に注目される。