三嶋大社は,古くは三宅島にあり,伊豆の白浜を経て現在地に遷座したと伝える。鎌倉時代以降,篤い崇敬を受け,江戸時代初期に今日の境内基盤を整えた。
本殿,幣殿及び拝殿は,流造の本殿と,入母屋造の拝殿を,両流造の幣殿で繋いだ,複合社殿の形式である。現存するのは,安政元年(1854)の東海大地震後に再建されたもので,慶応三年(1867)に上棟祭が行われた。その後の修理等で,床や建具など,一部に変更はあるが,諸記録や痕跡から,旧規は明らかである。
三嶋大社本殿,幣殿及び拝殿は,本殿妻飾や,幣殿・拝殿接合部など,各部の形式や細工に趣向を凝らしている。また,上質な欅を用い,素木の美しさと,要所に彫刻を配した華やかさを,具備している。江戸時代末期の装飾豊かな複合社殿建築として,高い価値がある。