頭上の十面と両手前、膊などを別材矧ぎとするほか、頂上仏から本躰・台座の蓮肉部までを含み、榧【かや】の一材から丸彫りし、素地仕上げとした、いわゆる檀像彫刻の一例である。
檀像彫刻は唐時代の中国から伝わり、わが国でも平安時代に盛んにつくられて遺品も少なくないが、この像では特にプロポーションがよく整い、しかもふっくらとした肉付けを効果的に引きしめる胸や腹部のくびれ、太く深めに刻む衣褶などの鮮やかな彫り口が注目される。製作は十世紀初頭ごろと思われるが、当代のこの地方の豪放な作風とは異なり、中央の仏師の手になったものであろう。