唐招提寺鼓楼 一棟
唐招提寺鼓楼は金堂(国宝)の東側斜後方に位置しているので、経楼の後身と考えてよいであろう。棟木に仁治元年(一二四〇)の銘があって、建立年代が明確である。
桁行三間、梁間二間、楼造となり、一階には縁をめぐらしている。この形態は古代寺院の鐘楼、経蔵にみられる楼造の形式を取りながら、これに床を付けたもので、異色のある形式であって、意匠的に成功している。小規模ながら、出組の組物をもち、また壁面をすべて扉または連子窓として、にぎやかな立面を形成し、よくまとまった美しい姿をしている。細部の様式はほとんど和様からなっているが、頭貫鼻にだけ大仏様の混入がみられる。鎌倉時代において大仏様を吸収した和様遺構のうち優れたものである。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)