平安後期の金剛界大日如来像で、寄木造、漆箔の手法になる丈六の大作である。面貌、体躯の大方はこの頃通途の温和な表現になるが、腹部を強く引きしめた抑揚ある肉身、弾力に富む両腕のつくりなど、随所に次代の気分もうかがわれる。木寄法は巨像制作にふさわしい合理的なもので、基本的には、久安四年(一一四八)に造られたと考えられる京都・三千院の阿弥陀如来像(重文)と同様なつくりといえ、本像制作の時期も、その辺におかれよう。京都にはこの頃の遺品は数多いが、意外にこの像種のものは少なく、また大作である点からも見のがせない。