元興寺は左京四條五條の七坊の内にあった。現在旧境内は、そのほとんど全部が市街中に没し去り、わずかに街路、地名等にその面影を認めうるのみである。
残礎の点在も報ぜられているが、このような現状において、さし当り遺構の顕著なものを保存しようとするものであり、元興寺の塔跡は、すでに指定されているので、今回その僧坊の跡として元興寺極楽坊の境内を指定する。ここは、櫛比する民家を隔てゝ塔の北方に当り、東室南階大房の一部で、礎石が遺存し、いま本堂、禅室がその上に建てられている。また小子房の跡も一部存し、その建物は禅室の南側に移されている。なお、境内の西南隅、禅室の西南方に当って講堂の基礎地形の東北端部が見出されたのは幸いである。