大磯丘陵の東端に位置する高麗山の南面には、シイやタブを主とした常緑広葉樹で構成される沿海性の自然林がみられる。高麗山は、標高わずか165mであるが、相模川の沖積低地に接して特徴的景観を示し、古くから親しまれてきた山である。
以前は、山頂部や尾根部の潮風のあたりが強い立地にクロマツが生育していたが、現在では全て枯れ、姿を消している。山腹斜面は土壌が浅く、崩れやすい場所が多い。このようなところには、アラカシやシラカシを多く混生したスダジイ林が生育している。一方、谷部で土壌が厚く、植物の生育環境が良好な立地では、タブノキ、イロハモミジなどが高木層を形成するタブ林がみられる。いずれの林内にも、ネズミモチ、ヤブツバキ、ジュズネノキ、アオキ、トベラ、テイカカズラ、イタビカズラ、キヅタ、ヤブラン、キチジョウソウ、ベニシダなどの常緑植物が生育している。
また分布北限域となるモクレイシ、樹脂は灰黒色で、円形に剥がれた跡が白くなり、鹿の子模様になるカゴノキなどの分布は注目される。県内にわずかに残る自然性の常緑広葉樹林としては、面積も十分に確保され、自然度も高い良質な森林として評価される。