円盤状の低い高台を有し口縁部が外反する本体に、中位に突帯を有し下端が大きく開いた脚の付く型式の杯で、鋳造後に旋盤で仕上げた響銅器である。形態は陝西省臨潼県新豊鎮慶山寺址の開元29年(741)に再建された塔の舎利安置室内出土例に類似しており、J甲479の銅鍍金唐草鳥文脚杯と同じく、8世紀前葉の製作とできよう。同時期の白磁にも同じ形の杯があるが、本来は、西アジアの金属器に起源を有すると考えられる。また、正倉院中倉の瑠璃杯(紺色ガラス杯)も、類似の形態を有している。本例は全体に緑色の錆によって薄く覆われているが、保存状態も究めてよく、唐代の響銅器の高い製作技術を伺うことの出来る貴重な資料である。