双鳳文杏葉(奈良県珠城山三号墳出土)
そうほうもんぎょうよう(ならけんたまきやまさんごうふんしゅつど)
概要
珠城山(たまきやま)古墳群は大和盆地の東南部周縁に位置する三輪山の、すぐ北に続く巻向山の別峯、穴師山から、西北に向かって張り出す丘陵の上に立地する。3号墳は3基の古墳群の中の1基で、全長47.5メートルの前方後円墳である。遺物は後円部の横穴式石室から発見されている。杏葉は馬具の一種で、胸繋(むながい)、尻繋(しりがい)の垂飾として用いられる。この遺物も心葉形の鉄地板に、地枕を重ね、透彫りの薄板を重ね、厚い縁板を多数の笠鋲で留めた金銅製品である。薄板は中央の下端部に三葉形を置き、左右に対称的に向き合う鳳凰文を配した図柄を透彫りし、さらに精緻な線刻で文様を描き起こした優品である。また立聞(たちぎき)の方孔には、鏡板(番号728-6)と同様の仕様を施す。本遺品は鏡板とともに古墳時代後期の6世紀後半に属する。そこに採用された文様の意匠は、斬新で精巧かつ華麗であり、古墳時代工芸技術の粋を表すもので、中国の六朝文化の影響を濃厚に受けたものとみられる。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.279, no.10.