十六羅漢像(第一~第八)
概要
仏教において、修行を完成させた聖者を指して羅漢と呼びます。羅漢のなかでも、十六羅漢と呼ばれる16人は、釈迦がなくなった後もこの世に長くとどまるとされ、仏教を守り、人々に広めることを託された特別な存在です。この作品はこの羅漢を描いた16幅のうちの一部にあたります。 もとは滋賀県大津市の聖衆来迎寺(しょうじゅらいごうじ)に伝えられたもので、現存する十六羅漢図でも最古の作品であり、より古い中国唐時代に描かれた羅漢像の様式を伝えています。 羅漢をはじめとした人物の表情は穏やかにとらえられ、多くの色を用いた明るい色調で画面がまとめられています。この作品は絹に描かれたものですが、実は、その絹の裏から色を塗る、裏彩色と呼ばれる技法が使われています。絵具の色が絹目を通して見えることによって穏やかな色調となり、柔らかな肌の質感などが表現されています。このような、明るく柔らかい色合いこそが、11世紀における日本の仏画の特徴です。また、それぞれの図の上部には色紙形と呼ばれる四角い区画を作り、羅漢の名前と住む所を記しています。よく見ると草花や鳥の姿が描かれており、平安貴族の優美な趣味がうかがえます。