ラズム・ナーマ
らずむなーま
概要
インドでは、インド神話や、シヴァ神、ヴィシュヌ神などのヒンドゥー教の神々、王の肖像や歴史的なエピソード、男女の恋愛などさまざまなテーマを緻密なタッチと鮮やかな色彩で描いた、細密画とよばれる絵画のジャンルが発達しました。多民族国家であるインドでは、細密画の表現も地域によってさまざまで、それがまた魅力であるともいえます。
『ラズムナーマ』とは、インドの叙事詩(じょじし)である『マハーバーラタ』のペルシャ語訳です。ペルシャ語でラズムは戦争、ナーマは物語をそれぞれ意味します。ムガル王朝の第3代皇帝であったアクバルは、1574年にイスラム教とヒンドゥー教の融和を図るために、インドの叙事詩(じょじし)である「マハーバーラタ」をペルシャ語に翻訳させました。手書きの写本が作られ、華麗な挿絵が付けられました
『ラズムナーマ』の第1次の写本は1584年から1586年の間に、そして第2次の写本は1598年から1599年の間にできあがりました。この作品の製作年代が16世紀末であることと、『ラズムナーマ』の第1次写本、第2次写本の製作時期を合わせて考えてみますと、この作品が初期の写本に近い貴重な作品であることがわかります。