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北海道・沙流郡平取町
国指定文化財(重要文化的景観)アイヌの伝統と近代開拓による沙流川流域の文化的景観沙流郡平取町
「アイヌの伝統と近代開拓による沙流川流域の文化的景観」は、日勝峠を源とするシシリムカ(沙流川)の流域に展開する。沙流川流域とアイヌの人々との関係は深く、川原に生育するヤナギはイナウ(木弊)の製作に不可欠であり、広い沢筋に発達するハルニレの林床にはトレプ(オオウバユリ)やプクサ(ギョウジャニンニク)、プクサキナ(ニリンソウ)といったアイヌの人々の生活にとって有用な植物が多数生育している。沙流川は、数年から数十年周期の大雨で大氾濫を起こし、これらの植物を洗い流してしまう。この現象は長期的にみればササ類の繁茂を防ぐことによってハルニレの林に新たな有用植物の再生を促し、川筋にアイヌの人々の安定的な生活圏を作り出すことに結びついた。また、沙流川中流域に形成された河岸段丘面には、近代開拓によってこの地域に移住した人々が営んだ牧野林が広がっている。牧野林は、エゾミヤコザサが冬期に馬の餌となるため、北海道で広く行われた林間放牧によって生まれた独特の森林利用の形態である。今日では外国産種子の播種によって人工的な牧草地が増加し、まとまった特徴が認められる状態で維持管理が行われているものとしては、日高地方に残るものが最大規模である。以上のように、「アイヌの伝統と近代開拓による沙流川流域の文化的景観」は、アイヌ文化の諸要素を現在に至るまでとどめながら、開拓期以降の農林業に伴う土地利用がその上に展開することによって多文化の重層としての様相を示す極めて貴重な文化的景観である。
国指定文化財(重要有形民俗文化財)北海道二風谷及び周辺地域のアイヌ生活用具コレクション沙流郡平取町字二風谷55
沙流郡平取町字二風谷79
この資料は、北海道沙流郡平取町二風谷のアイヌ文化研究者萱野茂氏により昭和28年頃より収集された、北海道沙流川流域の二風谷およびその周辺地域で使われたアイヌの人々の生活用具の収集である。
二風谷および沙流川流域は、アイヌの生活文化を濃厚に保有する地域で、明治25年頃まではアイヌの人々だけが居住していたという。萱野氏が本格的に収集を始めた昭和30年代は、明治生まれの古老が健在で、こうした古老の家から生活用具を収集するとともに、古老の指導によってすでに使われなくなった伝統的な生活用具類の製作も行った。
これらの資料は、昭和47年に北海道ウタリ協会が主体となって建設した二風谷アイヌ文化資料館で保管・展示され、その後、平成4年に平取町立二風谷アイヌ文化博物館が建設されるに伴い収蔵資料の過半数が町に寄贈され、残りの資料が二風谷アイヌ文化資料館の旧施設を利用した私設の萱野茂二風谷アイヌ資料館に保管・展示されることとなった。
現在、資料は平取町立二風谷アイヌ文化博物館に約1400点、萱野茂二風谷アイヌ資料館に約1000点と二館に分かれて保管・公開されている。しかし、これらはあくまでも一体的に保存・活用されることで本来の価値が発揮されるものであり、平取町および萱野氏とも一体的な保存・活用を望んだことから、両者の資料を合わせて指定したものである。
本件は、この約2400点に及ぶ萱野氏収集のアイヌ関係資料から、二風谷を中心とする沙流川流域で使われ、製作法や使用法などの記録が明確な資料を整理したものである。
国指定文化財(登録有形文化財(建造物))北海道大学文学部二風谷研究室(旧マンロー邸)北海道沙流郡平取町字二風谷54-1
アイヌ診療と研究で知られる人類学者マンローの旧自邸。彼自身の設計とされる。マンサード屋根を頂く木造3階建,下見板張の洋館で,正面性を引き立てる大きな屋根窓に加えて,妻面屋根裏部の出窓が,この建物の意匠に彩りを添えている。