前身の農林学校正門として建設された。旧三国街道に面する校地中央に位置する。主門柱は基礎石上に煉瓦のイギリス積の角柱を立て、柱頭は狭間を彫った鉢巻石や、歯形模様付の笠石で飾る。北の脇門柱も同意匠で、表構えを象徴的に演出する重厚な門である。

前身の県立農林学校時代の建設で、寄宿舎で使うランプを消灯時に収容し、清掃や給油も行った。壁は煉瓦のオランダ積で内外とも現しとする。寄棟造桟瓦葺の小屋組はキングポスト・トラス。入口は両開き鉄扉で防火に配慮する。寄宿舎生活を支えた建物である。

もと造り酒屋の醸造蔵で旧主屋の南に接続する南北棟。桁行二〇メートルに及ぶ土蔵造二階建で、置屋根を切妻造桟瓦葺とする。外壁は鉢巻付の漆喰塗とし、腰を竪板張とする。妻入で引分けの塗戸を備え、内部は一室、二階は酒造用の床で仕込蔵の特徴を伝える。

もと造り酒屋の住宅として建築された。道路に近い北寄りが切妻造の平屋建、南が寄棟造の二階建で一連の土間が南北に貫く。平屋の一〇畳二室は小壁が高く西の土間から採光する近代的な造作で、二階座敷は端正な書院座敷である。近代の上質な市街地住宅である。