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青森県・西津軽郡深浦町
国指定文化財(史跡名勝天然記念物)北金ヶ沢のイチョウ西津軽郡深浦町
イチョウは裸子植物に属する落葉高木である。中生代に栄えた植物の末裔といわれ、世界各地から多くの化石が発見されているが、現生のものは1科1属1種のみである。日本に自生は無く、中国(安徽省・浙江省)が原産で、室町時代に渡来したといわれている。日本各地の神社や寺院等に植栽されており、種子のギンナンは食用とされている。
北金ヶ沢のイチョウは深浦町北部、鰺ヶ沢町との境近くの北金ヶ沢地区の海岸から約200m内陸で、段丘崖の下に位置する。非常に多くの気根を出し、それらが地面に着き幹の一部となっていることから、目通り幹周22mとなり、樹高も31mに達する巨木である。このような巨木でありながら、枝をよく張り、樹勢も良好で、イチョウ独特の樹形をよく示している。また、当地域では古くから地域随一の巨木として知られており、近年、我が国で最大のイチョウであり、かつ樹木全体としては4番目の大きさであることも明らかになった。
このイチョウは人の乳房状あるいは鍾乳石状の気根が多数垂れ下がっていることから、母乳が不足した女性の信仰対象として「垂乳根の公孫樹」とも呼ばれ敬われていた。母乳の出ない女性が秋田や北海道からも願掛けに訪れ、気根にお神酒とお米を供えて祈る風習は昭和50年代まで続いていたといわれている。この地域は中世以降、西回り船すなわち日本海の海運により栄えた地域で、重要な港として知られている。イチョウの渡来時期から考えると妥当性に疑問が残るものの、14世紀後半に十三湊を拠点に栄えた安藤氏がイチョウの樹の付近に寺院を建立したとの伝説が残されている。
このように樹勢も良好でイチョウ独特の樹形をよく示し、信仰の対象として地域の人々にも慕われ大切にされているとともに、イチョウとしては我が国最大であり、最大級に成長した日本有数の巨樹としても貴重である。よって、天然記念物として指定し一層の保護を図ろうとするものである。
国指定文化財(重要有形民俗文化財)円覚寺奉納海上信仰資料西津軽郡深浦町深浦字浜町275-2
この資料は、津軽の風待ち港として知られてきた深浦の円覚寺に奉納された海上信仰資料で、船絵馬70点、髷額28点などからなる。
船絵馬は、ほとんどが北前船の航海安全を祈って船主や船頭が奉納したものである。天保7年(1836)から明治29年(1896)に至るまでの絵馬がまとまって残されている。そのうち、越前敦賀の庄司太郎左衛門が寛永10年(1633)に奉納した船絵馬は、北前船の前身の北国船の珍しい遺例で、中世的性格をもつ輸送船の様が描写されている。
髷額は、船乗りが海難に際して髷を切って祈り、一命をとりとめた後に感謝の気持をこめて奉納したもので、天保9年(1838)から明治15年(1882)までのものがある。