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岐阜県・本巣市
国指定文化財(史跡名勝天然記念物)根尾谷の菊花石本巣市根尾町
秩父古生層ノ緑色シヤールシュタイン中ニ「アラゴナイト後ノ方解石」が放射状結晶集合體ヲナシテ出デ恰モ菊花ノ如キ斷面ヲ示セルモノナリ集合體ノ大サハ直徑一センチメートル内外ヨリ二五センチメートルニ及ビ多クハ中心ニ核ヲ有ス 斯ル奇形ノ結晶集合體ヲ有スルシヤールシュタインハ南支那ニ出ヅルモノノ外從來世ニ知ラルルモノナク世界的ニ極メテ稀有ノモノナリ
秩父古生層の緑色シャールシュタイン中に「アラゴナイト後の方解石」が放射状結晶集合体をなし あたかも菊花の如き断面を示すものである。このような奇形の結晶集合体を有するシャールシュタインは南支那に出るものの外 他にはその類例なく、世界的に極めて稀有であって学術上特に価値の高いものである。
国指定文化財(史跡名勝天然記念物)根尾谷断層本巣市根尾
1891(明治24)年10月28日午前6時38分,岐阜県地方を未曾有の大地震が襲った。内陸の地震としては歴史上最大の規模の濃尾地震である。マグニチュードは8.0,有感の範囲は,北は仙台から南は鹿児島まで及んだ。この地震の震源となったのが,総延長80kmにも及ぶ根尾谷断層である。指定地での断層は,左横ずれ成分をもった正断層で落差は6mに及ぶ。この断層地形は,地震から100年以上を経過した現在でも鮮明にみることができる。
天然紀念物調査報告(鉱物ノ部)第二輯 二〇頁 参照
明治二十四年十月二十八日美濃尾張ヲ中心トシテ起リタル大地震ハ本邦ノ史乗ニ於テモ甚稀レニ見ルトコロニシテ其ノ人畜家屋等ニ及ボシタル損害甚大ナリシト共ニ學術界ノ参考トナリタル所甚多シ此ノ地震ハ本邦ニ於テ屡々見ル所ノ断層地震ニシテ而モ其ノ断層ハ明カニ地表ニ露ハレ断層地震ノ最モ好キ實例の示セリ此ノ地表ニ露ハレタル断層ハ頗ル稀有ニ属スルヲ以テ内外ノ地貭學ニ関スル参考書及教科書ニハ其ノ寫真ヲ掲載スルモノ頗ル多キニ至レリ然ルニ今ヤ此断層地ハ漸次石垣ニ改築セラレ断層ノ状態ヲ明カニ認ムルコト能サルニ至ルノ虞アルニ因リ是レ其ノ一部ヲ区劃シテ之ヲ保存スルノ殊ニ切要ナルヲ認ム
明治二十四年十月二十八日濃尾大地震はわが国の史上稀有の大規模のものである。この地震はわが国において■々見る所の断層地震であるが、その断層現象は明かに地表に露はれ根尾谷におけるものはその最も良き実例を示すものとして特に価値が高い。
国指定文化財(史跡名勝天然記念物)根尾谷淡墨ザクラ本巣市根尾
根尾村板所今村の山麓台地に生育するエドヒガンの代表的な巨樹で,枝の広がりは30mにも達している。花は淡紅色で4月中旬頃に咲き,盛りを過ぎると淡い墨色となるため,淡墨ザクラと呼ばれる。サクラ類では全国でも5指に入る巨樹で,地元では樹齢千数百年といわれ,植栽に関する伝説,詠まれた歌なども知られている。
天然紀念物調査報告(植物之部)第三輯 九一頁 参照
天然紀念物解説 一五一頁
岐阜縣調査報告書 第一回
彼岸櫻 Prunus aeguinoctialis Miyos ノ代表的巨樹ナリ、地上五尺ノ高サニ大ナル瘤アリ、瘤ト共ニ測ルトキハ幹圍約三丈品種ハ白彼岸ニ属ス。
S52-12-065根尾谷淡墨ザクラ.txt: エドヒガンの代表的巨樹として大正11年10月21日指定され、根尾村の村民によて今日まで手厚く保護されていたが、その根元から3メートル程離れた人家(平家)の与える影響が大きいため、この地域約300平方メートルを追加指定し、サクラの保護を図りたい。
国指定文化財(重要無形民俗文化財)真桑人形浄瑠璃
この人形芝居はいわゆる三人遣いの人形浄瑠璃であるが、文楽の影響を受ける前からこれが行われていたことを示す伝承があり、文献にのみ名を残すカシラを現に所蔵し、文楽ほか他の地域では上演できなくなった外題を有し、さらに野外の舞台(専用舞台)で上演してきていることから演技演出に大振りなところがあるなど、人形芝居の変遷を知る上で貴重であり地方的特色もある。
真桑は、岐阜市の西方約八キロの地にあり、かつては真桑瓜の名産地であった。人形はここの物部神社の春の例祭に境内の専用舞台(重要有形民俗文化財、昭和五十年九月指定)で奉納上演されてきている。
この人形芝居は、当地方の灌漑用水に功労のあった福田源七郎(元禄五年歿)の亡魂を弔うために「義民源七郎」を演じたのに始まると伝えられており、所蔵のカシラ七十七体の多くは文楽のものとは異なるに淡路系の鉄砲ざし遣いのもので、中には竹本豊竹【たけもととよたけ】浄瑠璃譜などに名を残すのみで他にはない六部【ろくぶ】・内匠【たくみ】などのカシラが含まれている。
祭り当日は、午前中神事が執り行われ、午後、間口七間、奥行き五間の人形舞台(木造瓦葺、明治五年創建)にて、最初に「三番叟」を演じて後数番の外題が上演される。「絵本太功記」、「伽羅先代萩【めいぼくせんだいはぎ】」、「奥州安達原」の人気曲をはじめ多くの伝承演目があるが、中には「日吉丸稚児桜(五郎助住家の段)」、「蓮如上人一代記(嫁おどしの段)」など文楽をはじめ他の地の三人遣い人形浄瑠璃では既に演じられなくなった貴重なものも含まれている。人形の動きは歌舞伎的な大振りなところがあり、独特な演出を見せる場もある。浄瑠璃の語り手は伝統的に地元の人達が勤めている。