本件は、近江売薬の一つで、配置売薬として知られる「甲賀売薬」の製造と販売に使用された用具の収集である。当地の売薬業は、甲賀の山伏が各地での布教の際に、土産物として薬を携行したことに始まるとされ、近代以降、甲賀地域の主要な産業として発展した。本収集は、薬種の選別や調合、製丸などの薬製造の各工程で使用された用具と、行商時に用いた鞄類や携行品などの配置売薬用具のほか、得意先で配布した商品の広告類などから構成される。

敷地北東隅に西面し、米を収納する蔵。平屋建切妻造平入桟瓦葺で西に戸口を設けて下屋を付す。板を積み上げたいわゆる井籠蔵で外壁は土壁で塗込め縦板張とする。内部は一室の板敷で、北に小窓を一箇所開ける。敷地北東の歴史的景観をつくる貴重な構造の蔵。

敷地北西隅に東面し、家財を収納する土蔵。二階建切妻造平入で、屋根は置屋根形式の桟瓦葺とする。東に戸口を二箇所設け、窓を西に四箇所、北に二箇所開ける。内部一階は南北二室で北室南に階段を設け、二階は一室とする。敷地北西の歴史的景観をつくる土蔵。

主屋の北背面に庭を介して建つ離れ。平屋建、切妻造桟瓦葺で、北西に便所、南東に主屋に至る渡り廊下を附属する。内部は二列四室として北面と南面に縁を付して庭を臨む。北西室は床高を上げ、西に大床を構えた御上段の間とし、本陣の離れ座敷の形式を留める。