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京都府・木津川市

国指定文化財(国宝・重要文化財(美術品))京都府神雄寺跡出土品京都府木津川市山城町上狛小字千両岩

京都府神雄寺跡出土品

 神雄寺跡は、平城京の北、奈良山丘陵の北東端に築かれた山林寺院跡で、奈良時代から平安時代初頭(8~9世紀)に機能した。本一括はその主要な出土品全911点で構成される。
 特筆されるのは、山水を立体的に造形した組み合わせ式の彩釉山水陶器で、須弥山や極楽浄土の風景を表現したとの意見がある。また、多量に投棄された灯明皿や「悔過【けか】」「浄」などと記された墨書土器、正倉院宝物に類例のある陶製腰鼓、万葉集巻10所載の和歌(「あきはきのしたはもみち」)が載る木簡、天部像とみられる塑像片、奈良三彩の仏具など仏教儀礼・芸能に関わる資料を数多く含む。さらに、「神雄寺」「神雄」「神寺」などと記された多数の墨書土器は、史料に認められない本寺院跡の名称と、神仏混淆となるその性格を示す。
 小規模な山林寺院にて執り行われた仏教儀礼・芸能を復元し、都城周辺の仏教文化の具体像を顕著に示すものとして学術的価値が高い。

国指定文化財(登録有形文化財(建造物))吉岡家住宅主屋京都府木津川市加茂町尻枝縄手87

吉岡家住宅主屋

岩船寺から北麓の農村にある旧家の主屋。座敷側入母屋造、土間側落棟とする大和棟の茅葺民家。床上は六間取で、表に6畳3室の続き間座敷、裏は大小3室を並べる。大戸口脇と土間にイモグラを設け、七連竈は見応えがある。差鴨居を突止め溝にして古式を残す。

国指定文化財(登録有形文化財(建造物))旧松原家住宅主屋京都府木津川市山城町上狛学校7

旧松原家住宅主屋

市西部の集落にある農家主屋。南正面の入母屋造桟瓦葺、平屋建で四周に下屋を廻し、下屋上に虫籠窓を穿つ。東に土間、西の前後に各3室を配して中廊下を通し、前列上手に座敷を設ける。伝統形式を踏襲しつつ平面や座敷等の意匠に時代感覚を現す近代和風住宅。

国指定文化財(史跡名勝天然記念物)神雄寺跡京都府木津川市

神雄寺跡

神雄寺跡は,木津と奈良の平野部を画する奈良山(ならやま)丘陵の北東端に位置する8世紀中頃から9世紀初頭に営まれた山林寺院である。発掘調査の結果,天神山(てんじんやま)丘陵南斜面に,流路と建物5棟,井戸1基などが検出された。丘陵裾部には平坦面を造成して,須弥壇(しゅみだん)をもつ礎石建(そせきだ)ちの小型の仏堂と方一間の小型の多重塔(たじゅうとう)もしくは多宝塔(たほうとう)が建てられた。谷部には,仏堂と中心軸を合わせて東西3間,南北2間の掘立柱(ほったてばしら)建物の礼堂(らいどう)及び流路が配置された。これらの建物は8世紀中葉に建立され,塔のみが10世紀まで存続したが,他は9世紀初頭までには廃絶した。谷部の流路からは,5,000点以上の灯明皿(とうみょうざら),少なくとも上二句が『万葉集』に所収されたものと一致する歌が書かれた歌木簡,楽器,彩釉(さいゆう)山水陶器,緑釉及び三彩陶器,墨書土器などが出土した。これらの遺物からは,歌の詠唱を伴う儀式や燃灯供養(ねんとうくよう),悔過法要(けかほうよう)などの仏教儀礼が行われたと考えられる。また流路からは,神雄寺と書かれた墨書土器が多数出土し,文献には認められないが,寺の名称は「神雄寺」であり,「かみおでら」のほか「かんのうでら」,「かんのうじ」,「じんゆうじ」,「かむのをでら」などと呼ばれていたと考えられる。神雄寺跡は遺構と遺物が良好に遺存しており,そこで行われた仏教儀礼の在り方を知ることができる全国的にも稀な寺院跡であり,奈良時代の仏教の展開を考える上でも重要な遺跡である。