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広島県・福山市

国指定文化財(登録有形文化財(建造物))林家住宅主屋広島県福山市鞆町鞆字鍛冶町271

林家住宅主屋

鞆城跡北東の角地に位置し、かつて醸造業や廻船業で栄えた商家の町家。通りに東面する二階建入母屋造平入本瓦葺で外壁は黒漆喰塗仕上で軒を現す。一階出隅は出格子構えとし、二階壁面は広い縁取の木瓜形虫籠窓を並べて腰を海鼠壁とするなど豪壮な意匠の町家。

国指定文化財(登録有形民俗文化財)鞆の鍛冶用具及び製品広島県福山市鞆町536-1

鞆の鍛冶用具及び製品

鞆の鍛冶用具及び製品は、古来より潮待ちの港で知られた広島県福山市鞆町において、船具などの鍛造に使われた用具とその製品である。鞆の鍛冶職人の間では、近世以来の家内労働的な徒弟制度が昭和初期まで続けられ、親方と弟子がともに鍛造したが、本件はその当時の手作業による用具を数多く収集している。鍛冶用具は、鞆の主要製品であった錨や船釘などを製作するために、昭和の中頃まで使われていた用具が一式揃っている。鉄を熱処理する火床に風を送る鞴、作業台の金床、鉄を挟んで打つ箸や鎚、仕上げ道具の鑢やキサゲなど、用途ごとに大小各種が揃う。ほかにも漁網の錘の鋳型や備中鍬の爪なども収集されており、船具類の鍛造にとどまらない製作活動の幅広さが窺える。代表的な製品は、錨と船釘である。錨は四爪錨や二爪の唐人錨などで、船釘は縫釘、通釘、包釘、貝折釘などの木造船の建造用途によって異なる大小各種が揃う。昭和の中頃までに製作された各種の製品が網羅的に収集されている。

国指定文化財(重要伝統的建造物群保存地区)福山市鞆町広島県福山市

福山市鞆町

福山市鞆町は沼隈半島東南端に位置する港町で、周囲の島々と共に鞆の浦と呼ばれる景勝を成し、鞆の浦の地名は『万葉集』の大伴旅人の歌に初見される。古代より潮待ちの港とされ、瀬戸内の海上交通の要衝として栄え、近世には醸造業や船金具・農具・漁網等の製造業も盛んとなり、明治中期以降に海運が衰退しても、これらの産業が町を支えた。江戸中期から昭和戦前までの伝統的な主屋が、中世を基盤として江戸中期までに整えられた地割と共に良く残り、石垣や石階段等の工作物、浜蔵や常夜燈、雁木、舟繋石等の港湾施設と一体となって、港町としての歴史的風致を良く留める伝統的建造物群保存地区。

国指定文化財(国宝・重要文化財(美術品))菅茶山関係資料福山市西町2-4-1

菅茶山関係資料

 菅茶山(1748~1827)は、江戸時代後期の漢詩人、教育者として知られる。茶山の漢詩は、唐詩偏重を排して宋詩に範をとり、日常の感興を平明かつ写実的に表現する詩風を確立したと評価される。生涯の漢詩2413首を収録する『黄葉夕陽村舎詩』(前編文化9年<1812>、後編文政6年<1823>、遺稿天保3年<1832>)は、当時最も広く親しまれた詩集であり、詩人としての茶山の名声を高めた書物である。一方、天明元年(1781)頃、郷里神辺に私塾黄葉夕陽村舎(後、廉塾、神辺学問所、現・福山市)を開き、多くの門弟を輩出し、後には福山藩の儒者として藩校弘道館にて経書を講じた。この間、青年期および壮年期における度重なる上方への遊学、文化年間の2度にわたる江戸滞在の期間を含めて、全国の学者・文人等と親交を結んだ。
 本件は、塾書庫・母屋等に保管されてきた5369点の資料群で、菅茶山の事績に関する最もまとまった一群になる。平成7年および20年に広島県立歴史博物館に寄贈された。
 著述稿本類は、漢詩文、和歌、俳句、随筆、紀行文、地誌類および意見書、覚書類からなるが、223点と多数を占める『黄葉夕陽村舎詩』の草稿類が注目される。草稿段階において、茶山自らが詩の選択、校正を繰り返し行っただけでなく、前編は六如、那波魯堂、頼山陽に、後編は武元君立、北條霞亭、頼春水、頼山陽に批正を仰いだことを反映し、これら草稿本も校正段階に応じ内容を異にし、各本に茶山による切継、校正、選択や批正者による選択、註記等が施され、出版に至る経過を伝える資料群となっている。
 文書・記録類は、日記、記録、文書、覚書および詩歌類からなる。日記は日用日記と紀行日記に大別され、前者は寛政12年(1800)から文化10年までの間の4冊が知られる。廉塾に関しては、「廉塾日記」、「廉塾規約」、「預銀差引帳」等から西国における著名な儒学教育塾であった同塾の塾生の在籍状況や塾の経営の実際を知ることができる。
 書画類は、蠣崎波響筆「巨椋湖舟遊図」、谷文晁、鈴木芙蓉画、柴野栗山、古賀精里等詩の「栗山堂餞筵詩画巻」をはじめ、茶山と諸人との交遊を背景に作成されたもので、画僧白雲、大野文泉、広瀬蒙斎等松平定信周辺の画家・学者が多く見出されることも特徴である。
 典籍類は、茶山在世時の廉塾の蔵書を中心に茶山及び一族手沢本を含む。廉塾における教授内容を反映し、漢籍、儒学書が充実し、和書では歴史、文学を中心とする。
 器物類の多くは板木である。そのなかで、アイヌ工芸品9点(煙草入・印籠・小刀拵・小物入等)は、製作時期に一定の確証のあるアイヌ工芸品としては最古例と考えられる。
 以上のように、本資料群は菅茶山の事績および思想、作品を理解するうえで最も重要な資料であるとともに、江戸時代後期における茶山と文人等との交友関係をつぶさに伝え、わが国文学史ならびに文化史研究上に価値が高い。