敷地西面南方を画す。南から番屋、牛小屋、門、便所を配し、北にドイツ壁風の鉄筋コンクリート塀を蔵まで延ばす。屋根はいずれも本瓦葺とし、門は一段高く切り上げる。番屋と牛小屋は下見板張り、便所は腰モルタル上部漆喰塗とし、変化のある表構えをつくる。

主屋西方に建つ。柱を密に立てる土蔵造二階建、切妻造本瓦葺で、内部は一・二階とも一室とし、南妻右寄りに扉口を開く。基礎石を高く積んで床面を高め、腰部は下見板張り、上部は軒まで漆喰で塗籠める。古くから洪水に悩まされた河口域の蔵の特色を備える。

敷地東端の中ほどに建つ納屋。後補の下屋を介して主屋の南東隅に接する。木造二階建、切妻造本瓦葺で、桁行七・八メートル、梁間四・九メートルの規模を有する。小屋は登梁と水平梁を混用する。農作業の用具等を納め、屋敷の機能上欠くことのできない建物。

主屋背面、敷地の北西隅に建つ。西半の納屋は外壁下見板張の切妻造二階建。東半の離れは入母屋の平屋で、主屋と渡廊下を介して接続し、東と南に内縁を廻らして六畳間と八畳座敷を置く。内縁天井は磨き丸太の扇垂木を疎らに配すなど内部意匠にも意を凝らす。