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宮城県・加美郡色麻町

国指定文化財(史跡名勝天然記念物)日の出山瓦窯跡加美郡色麻町

日の出山瓦窯跡

 奈良時代に陸奥国を経営し、開拓を北に進めるため、多賀城を扇の要として諸城柵や寺院が宮城県の北方に造営されている。これらの諸遺跡の調査は、遺瓦により進められた所が大であるが、今までのところ、奈良時代前半期の造営に伴って使用された瓦の窯跡は、多賀城周辺にはなく、北方の大崎平野の周辺の丘陵部にしか発見されていない。木戸瓦窯跡、大吉山瓦窯跡、日の出山瓦窯跡がそれである。これらの瓦窯跡からは重弁蓮花文軒丸瓦、重弧文軒平瓦、重弁蓮花文棟端飾板や丸・平瓦が検出されているが、この瓦の笵型は各瓦窯跡で非常に近似してはいるが別々の笵型を用いていることがわかっている。
 日の出山瓦窯跡は大崎平野の南辺にあり、5地点で瓦窯が知られているが今回はそのうちのA地点を指定するものである。この地点では、窯は丘陵の南斜面に7基存在し、6基は瓦を焼成しているが1基だけは須恵器を主に焼成している。窯は地下式の無段窖窯である。各窯はいずれも地山を掘り下げて前庭部を設け、地山に窯体を掘り抜いたもので、素掘りの焚口、平坦な燃焼室、傾斜のゆるい焼成室があり、奥に垂直に立ち上る煙道をもつ。窯の全長は5メートル強、幅・高さともに1メートル内外を計る。焚口から前庭部下方に排水溝を設けているものが多い。本瓦窯焼成の瓦は、南方25キロメートルの多賀城跡や多賀城廃寺跡、西北約8キロメートルの菜切谷廃寺跡等から出土している。
 木戸瓦窯跡は大崎平野の北辺にあり、地下式の窖窯が7基確認されている。本瓦窯焼成の瓦は南方40キロメートルの多賀城跡や多賀城廃寺跡から発見されている。
 大吉山瓦窯跡は大崎平野の西北部にあり、地下式の窖窯3基の存在が認められている。
 以上の3地区の瓦窯は構造なども共通した点がみられ、陸奥国における初期の瓦窯を形成し、多賀城跡や寺院跡などの造営期の瓦を焼成したものである。当時の城柵や寺院の造営の進展、並びに当時の窯業生産のあり方を解明する上で基準となる重要な遺跡である。