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熊本県・阿蘇郡高森町

国指定文化財(記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財)高森のにわか熊本県阿蘇郡(あそぐん)高森町(たかもりまち)

高森のにわか

高森のにわかは,定型的な演技演出様式の枠組みのなかで,毎年,時事性豊かな内容の作品を作り演じるという即興性を重視したにわか本来の姿を継承している。さらに高森弁での演技や,にわか舞台での上演など,芸能の変遷の過程や地域的特色を示して貴重である。
高森のにわかは,熊本県阿蘇郡高森町の風鎮(ふうちん)祭(さい)で演じられる即興的な寸劇であり,若者組を前身とする向上会の青年たちによって伝承されている。にわかは,祭礼両日の夜に披露される。向上会ごとに,三味線,太鼓を乗せた囃子方(はやしかた)の屋台を先頭に「にわか舞台」あるいは「移動舞台」と呼ぶ舞台を役者等が曳いて町内を廻り,向上会の名を記した高張(たかはり)提灯(ちょうちん)を掲げた者が陣取った場所で演じていく。高森弁で演じられるにわかは,その時々の話題を盛り込んだ毎年の新作が不文律となっており,一晩に十数か所で演じることから,向上会ごとに毎年10作品程度の新作が準備される。
まず舞台に立った青年が柝(き)を入れ,外題(げだい)紹介の口上(こうじょう)を述べて舞台を降りると,三味線と太鼓による囃子が演奏されて役者が登場する。役者は三歩進んでは二歩下がりつつ,踊りともとれる特有の所作で舞台を廻る。これを「道行(みちゆ)き」という。その後は台詞で筋が展開し,最後に「落とし」となる。落としには言葉落ちと物落ちがあり,落としに至る演技には一定の型が備わり,役者相互の,また役者と観客間の決まりの問答を経て,落としとなる。