白繻子地紅梅文様描絵小袖 酒井抱一画
しろしゅすじこうばいもんようかきえこそで さかいほういつが
概要
白繻子地紅梅文様描絵小袖 酒井抱一画
しろしゅすじこうばいもんようかきえこそで さかいほういつが
千葉県
江戸/1701-1800
表は白繻子地、裏に紅平絹(後補)を用い、間に薄綿を入れた袷仕立ての小袖である。袖口、襟下、裾に袱を出し、裾は袱に綿を厚く入れる。
文様は、描絵の技法を用い、背面を中心に小袖全体に連続して表され、左後ろ身頃裾部分から、幹をくねらせながら立ち上がる紅梅を主文様とする。枝は袖部分で左右に分かれて広がり、さらに前袖、前身頃および襟へと伸びる。左後身頃下部で分かれた一枝は、右後身頃脇部分で二枝に分かれて右前身頃へと至り、上下にその枝を伸ばす。左衽裾部分からは、細枝が右後身頃まで枝を伸ばす。左衽から左後身頃の梅樹の根元、および右衽から右後身頃にかけては、蒲公英と菫の一群が描かれる。
梅樹の幹は、水分を多く含んだ墨と、部分的に朱を混ぜ、付立風に描くことによる独特の濃淡で、凹凸のある堅い幹の質感を表す。幹および枝には梅の特色でもある、小枝が変形した棘が描かれる。至宝に伸びる小枝は一筆で勢いよく描かれるが、その枝先は丸みを帯びたもの、枝先を枝元へ折り返すようにはねたもの、力を抜いて払ったものが見られる。梅花および苔は赤色で描き、輪郭をぼかした大小の歪な円形に表す。梅花には、金泥で蕊を点と線で書き入れ、苔にも部分的に同様の蕊を描き入れる。萼は梅花、および苔を描いた後に描く。蒲公英は茎葉を緑で描き、葉脈を金泥で描く。幾層にも重なる花弁は墨で簡単に輪郭を描いた後に黄緑を塗り重ね、花蕊を金泥で表す。菫は薄緑で茎葉を描き、葉脈を金泥で描く。花弁は縹色で描き、蕊を金泥で表す。
左右両袖付部分、右前身頃と右衽の縫い合わせ部分、衽と襟の縫い合わせ部分に、若干の文様のずれが見られる。
身丈149.0 裄57.1 前幅21.0 後幅25.2 袖幅32.0 袖丈44.0
衽幅15.6 衽下り18.2 襟幅9.4 襟下86.7(㎝)
1領
国立歴史民俗博物館 千葉県佐倉市城内町117
重文指定年月日:20070608
国宝指定年月日:
登録年月日:
大学共同利用機関法人人間文化研究機構
国宝・重要文化財(美術品)
酒井抱一(ほういつ)(1761~1828)の筆による描絵小袖である。文様は独特な濃淡で紅梅を描き、梅樹の根元には蒲公英(たんぽぽ)や菫(すみれ)など春の情景が表される。「抱一」の朱印がある。本小袖は、紅梅を全面に見事に描いた小袖意匠としても秀逸であり、絵師が直接小袖に図様を描く描絵小袖の数少ない遺例の一つである。