からむし(苧麻)生産・苧引き
からむし(ちょま)せいさん・おびき
概要
衣料用資材としての麻には、大麻【たいま】、苧麻【ちょま】、亜麻【あま】等があり、なかでも苧麻の一種でイラクサ科の宿根【しゅくこん】性草木に属する「からむし」は、その細く長い繊維が強靭であることや光沢に富むなどの理由から、高級な麻織物である上布などの材料として古くから重視され、国内各地で栽培されていたが現在では福島、沖縄の両県がその主産地として知られる。
重要無形文化財「小千谷縮【おじやちぢみ】・越後上布【えちごじょうふ】」(昭和三十年五月十二日 指定)の伝統的な製造工程では、このからむしから精製された青苧【あおそ】(靭皮繊維【じんぴせんい】を手績みにした麻糸が昔から基本材料として用いられており、保持団体である「重要無形文化財越後上布・小千谷縮布技術保存協会」が実施している技術保存・伝承活動でも従来より福島県大沼郡昭和村産の高品質の青苧を使用してきている。
近年、化学繊維の発達・普及等に伴いからむしに対する需要が激減し、昭和村で行われている植付けから焼畑、施肥等、三年間の工程を経て刈取り・収穫に至る「からむし(苧麻)生産」、および選別したからむしの粗皮を丁寧に剥ぎ品質の優れた青苧を採取する「苧引【おび】き」の両技術者をとりまく経済・労働環境に著しい変動が生じ、その結果、それぞれの専門技術者数は徐々に減少し、また残された関係者についても高齢化が進むなど、伝統技術の保存および原材料生産の先行きが危ぶまれている。
重要無形文化財「小千谷縮・越後上布」の保存・伝承に今後とも万全を期するうえから、昭和村の伝統的な「からむし(苧麻)生産」および「苧引き」の両技術を早急に選定し、後継者養成等を強力に推進して伝統技術保存の措置を講ずるとともに、重要無形文化財の保存・伝承に不可欠な原材料の確保を図る必要がある。
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国指定文化財等データベース(文化庁)