世界の壁
せかいのかべ
概要
影絵で遊んだことがあると思います。手と指を組み合わせて壁やスクリーンに影を映すと、鳥が飛んだり犬が吠えたり、別の世界が現れるのです。
《世界の壁》には、見たことのあるようなものの影がうつっています。地球儀、ハンドバッグ、タバコを持つ人。グラス。植物。でも、「壁」のこちら側には、地球儀もハンドバッグもありません。なにもない。「ないということ」が「ある」。作家は「そこにないもの」の影を描くことで、「ない」と「ある」のあいだを探ってみたのです。
壁の前にたって、影を見ていると、頭のなかに、影を作ったものの想像のイメージがわいてきます。 「芸術というものは、作者が一人で作るものではないと思う*」作家は、芸術は「現実や自然と人間との関係で生まれるもの」だと考えています。作家と作品、それを見る人、それぞれとの関係のなかで、想像する力が芸術を生み出しているのです。
*(高松次郎『不在への問い』水声社、2003年)
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神奈川県立近代美術館