観瀑図
かんばくず
概要
観瀑図
かんばくず
瀧に臨み鬚をひねりながら詩を吟ずるのは、唐の詩人李白である。このような観瀑図は、15世紀以来五山の文芸僧たちの好む画題であった。李白の有名な「望廬山観瀑」の詩を典拠とし、李白と観瀑のイメージを重ねあわせることで、そこに絵画や詩が成立するのであり、中国文学に憧れをもつかれら禅僧の、詩仙李白に対する敬慕に発するものといえる。芸阿弥に観瀑図があり、祥啓や相阿弥、狩野正信にも観瀑図のあることは、そこにある種の系譜も想定される。
本図の筆者式部輝忠は、画史に仲安真康や祥啓と混同されてきたが、別人で、ひろく祥啓の一派に属し、画僧の領域を超えた、かなり本格的な画技を身に付けた職業画人とみられている。画中に著賛する景筠玄洪は、妙心寺三十五世の大原崇孚の弟子で、遠州称名寺や駿河善得寺に歴住し、天正3年(1575)相模を流浪中に客死したと伝えられる。図右下に「式部」の白文方印を捺す。
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