絹本著色不忍池図〈小田野直武筆/〉
けんぽんちゃくしょくしのばずのいけず
概要
秋田藩士小田野直武(一七四九-一七八〇)は、安永二年(一七七三)秋田藩の招聘【しようへい】でこの地を訪れた平賀源内より、殖産奨励の指導をうけるかたわら、オランダ系洋風画の伝授を受けた。これが秋田洋画の濫觴【らんしよう】で、その後直武の指導のもとに、秋田藩士佐竹義敦(曙山)とその弟角舘城代佐竹義躬へとその技法は広まった。もとより直接西洋画の技法を学んだものではなく、主として蘭書の挿絵によったため、銅版画の技法を学んだ細かいタッチが多く、技法の熟成はみられない。直武江戸在勤中の不忍池の実景をもとに、近景に草花を大写し、遠近感を強調している点に特色があり、舶来の顔料による豊麗な彩色とともに、早逝した直武画の代表作。