木造菩薩立像
もくぞうぼさつりゅうぞう
概要
いわゆる三尺の菩薩形立像で、右足からやおら歩行の態を示す姿は誠に自然な整いをみせており、また、衣のひだの自由な装飾味のある扱いにも巧みな写実的手腕がうかがわれる。衣の彩色や切金文様をはじめ、銅製の宝冠や瓔珞はきわめて精巧なもので、鎌倉中期の技巧的傾向を顕著に示す作品である。特に唇に水晶板を嵌めているのは他に例がなく、中国の影響を受けた当時の風潮の一面をあらわしている。しかし、この種の作品にありがちな格調を失する趣きが少なく、その製作時期は鎌倉中期(十三世紀半)を下らぬことが想定される。