アレクサンドリアの聖カタリナ
概要
バルトロメ・エステバン・ムリーリョは17世紀にスペインの商都セビーリャで活躍した画家。柔らかい筆致から生み出される甘美な聖母子像や聖女像で人気を博した。画業の初期に描かれた本作も殉教聖女を扱った作品である。
カタリナはアレクサンドリア出身の王女で、キリスト教への篤い信仰心を理由にローマ皇帝によって処刑された。処刑では車裂きの刑を宣告されたが、カタリナの祈りにより奇跡的に車輪が破壊されたため、最終的に斬首されたという。画面下部に描かれた車輪と剣はこのエピソードに由来する。
天から舞い降りた天使が抱える棕櫚の枝は死への勝利を示し、殉教者の栄誉のしるしである。対抗宗教改革期、命を賭して信仰を貫いた殉教聖人、聖女の姿は一般信徒たちの信仰心を高揚させるために用いられた。本作でもカタリナがひざまずき、手を広げて天を仰ぐ、やや大仰なポーズをとり、殉教に臨む悲劇のヒロインとして描かれ、鑑賞者の胸を打つドラマティックな作品となっている。
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三重県立美術館