絹本著色釈迦如来像
けんぽんちゃくしょくしゃかにょらいぞう
概要
如来と比丘形侍者とが並立して飛雲に乗じた様を表す。如来は、頭髪・著衣・光背など独特の形式の像であり、三国伝来の霊像として信仰を集めた清凉寺の釈迦像をかなり忠実に写している。清凉寺像は鎌倉時代に盛んに模刻が行われ、絵画としても浄福寺本や金蓮寺本が知られる。また単独に写すだけでなく図様の一部に組み込む例としては、建治三年(一二七七)作と考えられる、西大寺の釈迦三尊像(仁王会本尊)があるが、本図はそれに先んずるものである。比丘形侍者は、若く美麗な相貌を示すところから阿難とも解され得ようが、持物・印相は阿難としては例がなく、尊名を確定し難い。
上部の賛文は、前半が法華経方便品の一部、後半が同如来寿量品の一部で、方便をもって衆生を教化せんことを説く。これによって本図の主題は、方便に触発されて信仰の念を篤くする者に法を説くため、釈迦が常住の霊鷲山を出て現前するということかと思われる。鎌倉時代に高揚した釈迦信仰に基づく特異な図として注目される。
図像的な特色に加え、精緻な彩色も賞される。さらに画絹上辺の墨書に年記があって制作時期が判明するのも貴重である。