蓮池蒔絵経箱
れんちまきえきょうばこ
概要
蓮池蒔絵経箱
れんちまきえきょうばこ
奈良県
平安時代/1101-1200
木製、長方形丸角、被蓋造りの経箱で、塵居から立ち上がる緩やかな甲盛とかすかな胴張りを有する。蓋は深く身全体を包み込み、蓋鬘の前面と背面に刳形の手掛を設け、口縁には紐を廻らす。身は二段重ねで、底の周縁に僅かな面取りを施す。身下段の前面と背面に付された紐金具は金銅製で、猪目透四葉座に菊座を重ねて鐶付切子頭を据える。総体黒漆塗、蓋表と蓋鬘には、金の鑢粉を淡く蒔いた平塵地に研出蒔絵で、蓮池に鳥の飛ぶ図を描き、二段重ねの身の側面にも同様の図様を二段に連続するように表す。蒔絵表現はとても繊細で、蓮の花や茎、派の輪郭線や葉脈、流水の部分には金粉を密に蒔き、葉の輪郭線の内側には金粉を比較的粗く蒔いて変化をつけ、鳥の羽や花弁の細線は描割で表されている。身の内側には、開結ともあわせて一〇巻の法華経を納めたと思われる痕跡がある。
高10.3㎝ 縦20.6㎝ 横32.0㎝
1合
奈良国立博物館 奈良県奈良市登大路町50
重文指定年月日:20001204
国宝指定年月日:
登録年月日:
国(文化庁)
国宝・重要文化財(美術品)
経箱の形態や蒔絵技法において、平安時代の特徴が顕著に認められる作品である。特に、ゆるやかな甲盛とわずかな胴張を有する蓋が、二段重ねの身全体にかぶさる形態や、平塵地に研出蒔絵の技法は、平安時代後期に位置づけられる重文・蓮華蒔絵経筥(大阪・天野山金剛寺所蔵)と共通する。また、流水に蓮の表現もそれと相通じる意匠感覚を示す。
本品は、形態や蒔絵技法、図様とその表現から、天野山金剛寺所蔵品と同じく平安時代後期の製作と考えられる貴重な蒔絵経箱である。