荘重(高士望岳)
そうちょう(こうしぼうがく)
概要
険しく切り立った岩山と、楼台に座してそれを見上げる人物。雄大な自然の景観が、点景のように小さく描かれる人物との対比により強調されています。春草水墨画の佳品として知られるこの作品は、日本美術院の第12回絵画研究会に出品されました。「荘重」という課題制作に対して、それを暗示的に示すことに成功し、一等を受賞しました。水墨による朦朧体とでもいうべき表現を用いながら、手前の岩は黒々と、また楼閣にも明確な墨線を用いて、画面にめりはりをつけています。
現在の長野県飯田市に生まれた菱田春草は、明治23(1890)年東京美術学校に入学。同31(1898)年日本美術院創立に参加。朦朧体と呼ばれる革新的な描法を横山大観らとともに推し進め、湿潤な空気や光などをいかに表現するか模索を重ねました。同37(1904)年大観や六角紫水らとともにアメリカに渡り、各地で展観を催します。同39(1906)年 日本美術院の茨城県五浦移転に伴い同地に移住。病を得て早世しますが、近代日本美術史を語る上で欠かすことのできない名作を多く遺しました。