黒織部茶碗(冬枯)
くろおりべちゃわん(ふゆがれ)
概要
黒織部茶碗(冬枯)
くろおりべちゃわん(ふゆがれ)
愛知県
桃山時代
素地が黄白色陶胎をなす筒形の茶碗で、轆轤成形の後、ゆるやかに歪ませている。口辺にはおだやかな起伏をつけ、口縁を厚手に作り直下に箆目を一条巡らしている。胴には太い轆轤目が見られ沈線を一条巡らし、二方に箆削りを、一方に箆目をそれぞれ縦に施している。腰には大胆に面取り風の箆削りを施し、胴との境に箆目を一条巡らしている。高台脇を箆削りして、底にはやや幅広の高台をわずかに不整円形に削り出している。
内面から胴外側には漆黒色の黒釉を掛けているが、外側の一方は掛け残し、鉄絵具で抽象的な文様を描いて上に白釉を掛けている。内側の一方には浅く長石質の白釉を薄く重ねて掛けている。黒釉部分には大きな木の葉風の文様を箆彫りして白釉を掛け、腰から底にも白釉を施しているが、高台畳付は土見せとしている。高台内には「Q」字風の印を刻んでいる。
高9.5 口径10.5 高台径5.3(㎝)
1口
徳川美術館 愛知県名古屋市東区徳川町1017
重文指定年月日:19990607
国宝指定年月日:
登録年月日:
公益財団法人徳川黎明会
国宝・重要文化財(美術品)
黒織部は美濃焼のなかで桃山茶陶を代表する織部に含まれる焼物であり、茶碗や茶入などを焼造し、特に茶碗に優品を多く残している。焼成が完了した時点で製品を窯の外に引き出して急冷させ鉄釉を漆黒色に発色させ黒釉とする焼物で、瀬戸黒・織部黒とともに「引出黒」とも呼ばれている。なお黒釉のみで歪みを加えたり沓形に作られたものは織部黒と呼ばれ、これに本作品のように文様を施し加飾するものを黒織部と呼び区別されている。
本茶碗も、桃山茶陶の作行に見られるように轆轤成形した後に歪ませて作為を加えているが、抑え気味の穏やかな作行をなしている。片身替り風に掛け分けられた漆黒色の黒釉も見事に熔けて潤いがあり、闊達に描かれた白と黒の抽象的な文様が、やや深めの筒形の器形に見事に調和した、黒織部茶碗を代表する優品である。
なお、高台内「Q」字風の印と同じ印をもつ茶碗の陶片が美濃窯大萱の大平窯などでも出土しているが、陶工の窯印なのか注文者の手印なのかは判然としていない。
尾張名古屋の豪商である岡谷家に伝来したもので、岡谷家から徳川美術館に寄贈された。