黄瀬戸の技法
きぜとのぎほう
概要
黄瀬戸は、美濃窯の伝統的な陶芸技法であり、胎土の調合、ロクロによる素地の成形・仕上げ・施文の後、釉掛け、本焼き等の工程を経て制作されている。
黄瀬戸は、粗目で粘りが少ない百草土(もぐさつち)を胎土とし、主にロクロ成形であるが、向付や鉢では、型打ちによって体部を四方形に整えたり、口縁部を輪花に整えたりすることもあり、立鼓、竹節、菊花をかたどったものまで多様な表現をみることができる。いずれも、端正な落ち着きのある造形の範囲に留まっている。施文は、刻線、陽刻、印花、胴紐など、陰影によって文様を表したものを主とする。草花文を刻線で表現したものには、銅によるタンパン(胆礬)の緑色や鬼板(鉄)による茶色などの加飾がみられる。釉薬は土灰を主体として鉄分含有率は約4%とし、やや中性に近い酸化焼成によって黄緑色から黄土色に焼きあがるが、釉膚は透明化して光沢のあるものを「ぐい呑み手」、あまり透明化せずに艶消しとなり、表面に焦げが生じているものを「油揚手」などと区分される。黄瀬戸の技法の中で最も重要なことは胎土と釉薬に含まれる鉄分の含有率と焼成である。東濃地方特産の百草土を胎土とし、樹種によって含まれる鉄分含有量が異なる土灰を釉薬の主体として用い、その調合や焼き具合によって多様な姿を示すやきものである。
黄瀬戸は、瀬戸黒、志野、織部とともに、美濃桃山陶芸の中で最も重要な陶芸技法のひとつである。