喜界島の隆起サンゴ礁上植物群落
きかいじまのりゅうきさんごしょうじょうしょくぶつぐんらく
概要
喜界島は奄美大島の東に位置する南北12.5km,東西5.5kmの楕円形の島で,地形は平坦で琉球石灰岩の段丘により構成されている。島の周囲はサンゴ礁に縁取られ,北限域にあたる完新世の隆起サンゴ礁が広がっている。
対象地域は喜界島の南西部にある荒木海岸である。喜界島では汀線(ていせん)から標高約20mの台地までの間に広い隆起サンゴ礁の段丘が形成されている。汀線の飛沫帯(ひまつたい)から標高約5mまでに,点々と植物が分布する群落から矮性低木群落(わいせいていぼくぐんらく)などの隆起サンゴ礁上植物群落が展開されている。それ以上の高さでは風衝(ふうしょう)低木林となり,台地付近には沿岸地の樹林が残されており,連続的な植生の帯状分布が良好に見られる。
隆起サンゴ礁地域は平坦地のため人為的な改変されることが多く,かつて園芸目的での植物の盗掘が頻発していた。喜界町では,地域の自然の重要性から,昭和48年6月に鹿児島県内で最も早く喜界町自然保護条例を制定し,開発を規制,海岸植物等の保護を行っている。
対象地域は,隆起サンゴ礁の北限域にありながら,海岸植生から沿岸地樹林まで連続して残されており,面積も広く多様性の高い植物群落として貴重な地域である。