トルソ
とるそ
概要
東京美術学校在学中から帝展で2年連続して特選を受賞するなど将来を嘱望されていた堀江尚志であったが、大正末に肺結核に侵され、その後も完治することなく、昭和10年に38歳で夭折した。昭和7年の帝展第14回展出品の《裸婦》とポーズが共通していることから、同じ頃に制作されたと考えられる本作は、作者晩年の澄みきった境地を窺わせる佳品である。「トルソ」という作品名は、この像が頭部と両腕を欠いていることに由来するが、右腰の部分に手が残され、上腕部がそれと連続するような形態をしていることや、首や左腕の付け根の部分に切断された跡が明らかであることから、作者はいったん頭部や両腕を具えた像として制作し、後に自身の手で現在の形に改めたと考えられる。ギリシャの古代彫刻を思わせる爽やかな気品をたたえており、僅か35cmの小像とは思えない堂々たる量感も見事である。