後三年合戦絵巻 巻中
ごさんねんかっせんえまき
概要
平安時代後期、東北地方で起こった戦乱を描いた絵巻です。当時東北地方で力を持っていた豪族、清原氏の一族の内部で起こった争いとその争いに介入した源義家(みなもとのよしいえ)の活躍を描いています。源義家は平安時代後期の武将で、鎌倉幕府を開いた源頼朝、室町幕府を開いた足利尊氏の祖先にあたる人物です。絵巻は3巻が残っており、今回ご紹介するのはそのうちの中巻です。
この絵巻の特徴は、何といってもサイズの大きさ。画面の天地が約45センチメートルもあり、絵巻の中でも大きい部類に入ります。画面が大きい分、人物も大きく描かれており、その表情まではっきりと見ることができます。また色使いにもご注目ください。明るい色使いで戦場の場面が軽快に描かれています。こういった色使いは南北朝時代に作られた絵巻に特有のものです。
さらにこの絵巻には、貞和三(1347)年の制作、絵は飛騨守惟久(ひだのかみこれひさ)、内容を説明する詞書(ことばがき)は持明院保脩(じみょういんやすのぶ)によるものであるということが記されています。この当時、絵や書を書いた人物がはっきり分かっていることは珍しく、貴重な作品といえます。
絵巻の筋書きは比叡山の僧、玄慧 (げんえ) が起草したこともわかっています。武士ではない人物の視点から描かれた合戦絵巻であるということを踏まえて見てみるのも、この絵巻の楽しみ方の一つかもしれません。