日本書紀神代巻上下(吉田本)
ニホンショキカミヨノカンジョウゲ(ヨシダボン)
概要
卜占をつかさどる氏族であった卜部家に伝来した『日本書紀』神代巻の鎌倉時代の古写本。完存する現存最古本で、世に「吉田本」と呼ばれる。本文、ならびに夥しい注記は、同書の注釈書たる『釈日本紀』を著したことで知られる卜部兼方の筆になる。下巻には弘安九年(一二八六)春ごろ、兼方が重ねて紙背の注記=裏書を加えた旨の奥書があり、これに筆跡の違いを加味すると、①上巻本文の書写、②下巻本文の書写、③上下巻への一度目の注記、④上下巻への二度目の注記、という順番で成立したと考えられる。なお、後陽成天皇は『錦繍段』や『職原鈔』のほか、この神代巻も木製活字で刊行させた(慶長勅版)ことが知られる。