夏秋草図屏風
なつあきくさずびょうぶ
概要
この作品は、酒井抱一が尾形光琳(おがたこうりん)の「風神雷神図屏風」の裏にあとから描き加えたものです。第11代将軍徳川家斉(とくがわいえなり)の父で、一橋家の当主、治済(はるさだ)から制作を依頼された作品でした。作品保存のため、昭和49年(1974年)に表と裏に分けられ、現在はそれぞれ別の屏風になっています。
月の光を思わせる銀色の地に、夏から秋の草花が爽やかな色彩であらわされています。向かって右の屏風には、百合や昼顔などの夏草が、うなだれたように葉先を地面に向けています。背景には地面にたまった雨水が流れ出しています。雨粒を描くことなく、夏の強い夕立を表現しています。
左側の屏風には、葛(くず)や藤袴、ススキや野葡萄といった秋の草花が右から左へと大きく風に吹かれています。宙に舞う野葡萄や、裏返った葉の色に、風の強さがしめされています。
夏草図は、もともとは光琳の雷神図の裏に、秋草図は、風神図の裏にありました。つまり、この夏草は雷神がもたらした雨に打たれており、秋草は風神が巻き起こした風に吹かれているという関係にあったのです。
他にも光琳の「風神雷神図屏風」と抱一の「夏秋草図屏風」には、金と銀、天上の世界と地上の世界といった対比が見られ、光琳に憧れた抱一が、さまざまに光琳の作品に応えようとしたことがうかがえます。